309 / 1000

第309話

希が落ち着くのを待って式場を後にした。 帰りは俺が運転する。 「はあっ…何か身体だるーい…このままぐっすり寝たいけど、腹も減った… なぁ、希、何食べたい?」 「…斗真の食べたい物でいい。」 「…なぁ、さっきから何拗ねてんの? 俺、怒ってないだろ?何で?」 「…………………」 あー、黙っちゃったよ。黙秘権か。 「あっ、そう。じゃあ言わなくてもいいよ。」 それからお互いに無言。 別に喧嘩した訳じゃないのに。 希も何が気に入らないんだ? 俺、お前のしたいこと(何かわかんないけど)今の段階で拒否してないぜ? 腹が減ってたら余計にイラつく。 俺は目に付いた定食屋に車を滑り込ませた。 「いらっしゃいませ!」 昼前の、混み合う少し前だったようで席も空いている。 希は俺の後ろを黙って付いてきていた。 「お前何にする?俺は…Aランチでいいや。」 「…俺もそれで。」 「すいませーーん!」 「はい、お伺いします。」 「Aランチ二つ。」 「はい、Aランチ二つ!少々お待ち下さい!」 やたらと威勢のいいニイちゃんが、張り切って走っていった。 ふうっ…とため息をついて希を見ると、目を潤ませて俯いている。 そんなに深刻に考えなきゃならんことか? 俺、『わかった』って言ったよな? あぁ…もう、いいや。 こうなったらテコでも動きゃしないし。明日まで放っておこう。 身体もダルいし、眠たいし、昼寝して起きてから考えようっと。 「はい、Aランチ、お待たせしましたぁー」 「おっ、美味そう…ほら、希、食べるぞ!いただきますっ!」 揚げたてのアジフライが食欲を誘う。 お代わり自由のご飯も山盛りにして、空きっ腹にガツガツと詰め込んだ俺が、すっかり満足して食後のコーヒーを飲んでいる頃、やっと希が食べ終えた。 「…ご馳走様でした…」

ともだちにシェアしよう!