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第310話

何を落ち込んで何をぐるぐる自分の中で考えてんだ? いつも自信満々で俺について来いっていうタイプのコイツが、俺に関することになると途端にこんなになってしまう。 そんなに愛されてるのか、俺。 何だか優越感が湧いてきて、口元が緩んでくる。 相変わらず目元を潤ませた希は、超絶色っぽい。 こんな姿、他の奴らには見せられないっ。 制限速度ギリギリに遵守しながらマンションに辿り着き、駐車場に滑り込ませた。 なかなか車から降りようとしない希の手を掴んで、そのままエレベーターに乗り込んだ。 チラチラとこちらを伺うような視線を無視して、上昇する階数表示を見つめていた。 鍵を開け、玄関に滑り込んだ途端に希を抱きしめた。 「…っ、斗真?」 不安気な声音が耳元に落ちた。 「お前、何落ち込んでるんだ? 俺はお前を拒否なんてしていないぞ? 言いたいことがあるならちゃんと言えよ。」 そしてそっと身体の拘束を解いて、目を見つめると、ちゅっ とリップ音も高らかにキスをした。 靴を脱がせ、手を引っ張りソファーに座らせると、その上に跨るようにして座った。 「俺にさせたいことって何だ?」 希はしばらく黙っていたが、おろおろと目を泳がせながら、思い切ったように 「斗真に着せたいものがあるんだ!」 「…ん?着せたいもの?」 「…うん。でも言ったら…嫌がる…怒る…」 「何だよ…」 「………………」 「ほら、言えよ。」 それでも、もじもじと言うのを躊躇っているようだ。 「嫌がらないし怒らないから…」 「ホントに?」 「言わなきゃ嫌もへったくれもないだろ? ほら、怒らないから。」 希がゴクリと唾を飲み込む音がした。

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