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第311話

「あの、あのな…」 「うん。」 「あの…着てほしいんだ…」 「うん。」 「…ね……きめ……ふく…」 「はっきり言えよっ!」 意を決したように希が大声で叫んだ。 「ネコ耳尻尾付きメイド服っ!」 「はあああっ?!」 言った希も聞いた俺も真っ赤。 コスプレかボンテージかどっちかだとは思ったが… ナースじゃなくてメイドか… それもネコ耳尻尾付き… “ご主人様お帰りにゃん♡” …想像した…我ながらキモい… 笑える…これは… 「あっはっはっはっ…くうっ…はっはっはっ」 突然馬鹿笑いを始めた俺を希がキョトンとした顔で見つめている。 あー、ダメだ。 腹が痛いぃ… 腹がよじれる位に大笑いして、余りにおかしくて涙が出た。 ヒィヒィ言いながら、涙を拭いて、希の頬に両手を当てて、言ってやった。 「…あー、おかしかった…わかったよ。 自分で想像してキモくて馬鹿笑いしたけど…実際に着てみて気持ち悪くっても、お前が着てほしいって言ったんだから笑うなよ? なーんだ…メイド服か… なぁ、まさかもう買ってあるのか?」 俺に両頬を挟まれたまま、希がこくこくと頷く。 「いつの間に?」 「四日程前…ネットで…」 用意周到な…きっとアレコレ悩んで、メイド服に落ち着いたんだろう。 しかし、何という選択。 もっと小柄でキュートな男の()なら似合うだろうに、この俺にメイド服? そんなにお世話されたいのか? わかったよ。俺も男だ。 やってやろうじゃないか。 ふうっと大きなため息をつき、希を見つめると高らかに宣言した。 「明日着てやるから、機嫌直せ。」 「…とぉーまぁー」 破顔した希が抱きついてきた。

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