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第312話

俺は甘い。 希に対してはとことん甘過ぎる。 コイツの望むことなら、大袈裟だが…全世界を敵に回してでも全て何でも叶えてやりたいと思う。 仕方ない。 恥ずかしいが、愛して止まない愛しい伴侶の願いなら、聞いてやらねば男が廃る。 しかしなぁ… よりによって…メイド服かぁ… メイド服プラス、ケモ耳と尻尾… 何度想像しても…我ながらキモチワルイ… 「なぁ、希…」 「ん?」 「何でメイド服なの?」 「斗真かわいいから。」 「はあ?かわいい?このゴツいガタイの俺が? 希…お前、視力いくつだ?」 「両目、裸眼で1.5だけど。」 ふーむ…と唸った俺は、呆れたように 「『かわいい』は、ないからな。 なぁ、着てやるからマジで笑うなよ?」 と釘を刺した。 えへへっと笑う希が愛おしくてぎゅうっと抱きしめた。 「と、斗真!?どうしたんだ?」 希は殴られるのかとでも思ったのか、一瞬身を硬くしたが、戸惑いながらも俺の背中をそっと手を回してきた。 「ホントに…バカなこと考えるけど…希が好きだ。 バカな子ほどかわいいって本当だな。」 「バカバカ連呼するなよ! お前のこと好き過ぎて悪いかよっ! どーせ俺は、バカだよ…お前に関しては理性が飛んでいくし、あんなことやこんなことをヤりたくって堪らねーんだよっ!」 「あーあー…開き直ったよ、この子は… でも、そんなお前を愛して止まない俺も、相当なバカだな。 ま、バカ同士で愛し合おうぜ。 どうせお前には俺しかいないんだからな。」 「おっ!俺様斗真様降臨かっ!? くくくっ…男前だねぇ、斗真君。」 「…バーカ…」 ちゅっ ちゅっ 見つめ合う瞳は甘い光を宿して、どちらからともなく近付き触れ合う唇は甘かった。

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