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第313話

しばらく唇を堪能した後、名残惜しそうな希をそっと離すと 「これでおしまい。続きは明日な?」 と念押しすると、唇を尖らせ拗ねた口調で 「ひどいな…煽るだけ煽っておいて… まぁ、仕方ないか…明日のお楽しみは大きければ大きいほど…ふふっ」 「おっ、お前…何だかトンデモナイこと考えてんじゃないだろーな? ノーマル、ノーマルでお願いしますっ!」 「えーっ?『ノーマル』ってなぁーに? 俺、わかんなぁーーい。」 「チッ…あざとい…覚えてろよ。 …ちょっと早いけど俺、ご飯の支度しとくわ。」 「手伝おうか?」 「いや、簡単に済ませるからいいよ。 ゆっくりしてて。」 「うん、わかった。ありがと、斗真。 じゃあ、片付けは俺がするから。」 「おう。頼んだ。」 何となく重怠い身体を無理に動かしてキッチンへ向かった。 やはりツボを押さえられたりリンパマッサージで悪いものを流したり、身体のあちこちを触られ、自分自身で正しい位置に戻るように調整してるのかもしれないな。 ん? でも希に『やりたい放題される』=『身体の中も外も滅茶苦茶触られてる』 のに、怠さの感じ方が違うのはどうしてなんだろう? んー? まぁ、そんなことどうでもいいや。 ちらりと希の方を見ると…あれ?いない… どこに行った? ソファーの背もたれから覗き込むと… いた。 あの僅かな時間で寝息を立てて寝てる! 爆睡じゃん。人のこと言えないじゃん。 でも、身じろぎ一つしない伴侶の、その寝顔がかわいくて、思わずおでこにそっとキスしてやった。 希はぴくりとも動かない。 寝室から毛布を持ってくると、全身を包むように掛けた。 安心しきって…口元緩ませやがって。 何だか幸せな気持ちのまま、俺は続きをするべくキッチンへ戻った。

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