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第316話

あー、もう、面倒くさい。 考えるの止めよう。 俺達は心から愛し合ってる… それでいいじゃないか。 リビングへ戻ると希の姿がなかった。 あれ?どこに行った? しばらくして、少し涙目の希がやってきた。 微かに雄の匂いがする。 あ…抜いてきたのか… ごめん、希。 流石にソレには触れないで、努めて明るく言った。 「さ、明日に備えて寝るぞ!」 びっくりしたように目を見開き一瞬固まった希に、俺は笑いながらその手を引いて寝室へ連れて行った。 ぼふんとベッドに倒れ込むと、もぞもぞと布団に潜り込み、もつれ合うようにして抱き合って「おやすみ」のキスを落とすと、そのまま大人しく目を閉じた。 希も俺にされるがままに身じろぎ一つせず、目を閉じた。 そのうち、規則正しい寝息が聞こえ、それを聞いているうちに俺も睡魔に襲われて、いつの間にか寝落ちしていた。 カーテンから漏れる光を受け、ぼんやりと意識が浮上してきた。 隣で丸まって俺にぴったりとくっ付いて眠る愛しい伴侶は、まだ夢の中だ。 起こさないようにゆっくりと身体を捻って枕元の時計を見ると、まだ6時前だった。 喉の渇きを覚え、そっと布団から抜け出して冷蔵庫から水を取り出し、身体中を潤すように飲んでいると 「とぉーまぁー?どこぉ?」 おやおや、お姫様のお目覚めか。 「ここだよ。キッチン。水飲んでる。」 転がるように寝室から飛び出してきた希が、俺にダイブしてきた。 「うおっと…どうしたんだ? おはよう、希。喉乾いてないか?」 ふるふると首を振ると、俺にしがみ付いて離れない。 「どうした?甘えたさん。 何か怖い夢でも見たのか?」 希はただ潤んだ目で見つめている。

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