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第331話

「さぁ、お二人の新しい門出ですよ。 参りましょうか。」 俺たちを先導してくれる遥さんの後をゆっくりと歩いて行く。 もちろんお互いの指は絡ませたまま。 その後ろを凛ちゃんがしずしずと付いてくる。 スタッフの藤堂さんがブーケを運んでくれている。 閉ざされた荘厳な扉の向こうに、輝く未来が待っているのだ! 「斗真様、ブーケをどうぞ」 扉の前まで来ると、藤堂さんが俺の前にそっとブーケを差し出して手渡してくれた。 「ありがとう…」 俺の想いのこもったセレクトの白い花々を誇らしげに胸に抱えた。 その様子を見た希が俺の腰を引き寄せると、耳元でささやいた。 「…斗真…その花を選んでくれてありがとう。 俺、ものすごくうれしかったよ。」 えっ!?バレてたのか!? 目を大きく見開いて希を見つめる俺に、希は続けて言った。 「一生懸命に考えてたからさ、絶対に選んだ種類に意味があると思ってたんだ。 後で遥さんに聞いて…俺、泣きそうなくらいに感動したんだ。 斗真がそんな風にそのブーケに想いを託してたなんて。 斗真…本当にありがとう。 その想い、確かに受け取ったよ。 さあ、俺達の未来に…一歩を踏み出すぞ。」 うれしそうに微笑む希に、同じように微笑み返し、手を繋いだ。 遥さんは凛ちゃんの前に腰を屈めて、リングピローを差し出すと 「凛ちゃん、よろしくね。」 と優しく声を掛けていた。 「はいっ!」 しっかりと受け取り、彼女は振り向くと、俺達に 「りんにおまかせくださいっ!」 と最上級の微笑みをくれた。 感極まって無言で頷く俺達に 「では、遠藤 希様、斗真様の挙式を執り行わせていただきます。」 遥さんが合図をすると、俺達が選んだ『結婚行進曲』が流れ始めた。

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