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第332話

ゆっくりと扉が開かれて… 俺はブーケを落とさないようにしっかりと片手で抱え、顎をくっと上げ背筋を伸ばした。 (まばゆい)いばかりに煌めき、美しい光を散りばめるシャンデリアの光の中、柔らかな光を落とすステンドグラスの穏やかさに心躍らせながら、赤い毛氈(もうせん)の上をゆっくりと歩いていく。 絡める指からは、希の止めどなく溢れるような愛が伝わってくるようで… その後は説明を受けた通りに式が進んでいく。 緊張の余り、じっとりと汗をかいている。 式の進行状況もはっきりと覚えていない。 それでも誓いの言葉も噛まずにちゃんと言えた。 これで取り敢えずはホッとした。 指輪の交換も… (うやうや)しく希に左手を取られ、薬指に嵌められた指輪が、重く存在感を放つ。 俺もまた、希の左手を取り、ゆっくりと元あった場所に嵌めていった。 「誓いのキスをどうぞ。」 右手が俺の腰に回され、左手が顎に添えられたと思ったら、くいっと上向きにされ、希の顔が近付いてきた。 目を瞑ると同時に、柔らかくて熱を持った唇が触れてきた。 どの位唇を合わせていたのだろうか。 えへんえへん という咳払いに目を開けて名残惜しげに離れると、グレーの瞳の年配の牧師さんが笑いを噛み殺していた。 はっと気付き、羞恥のあまりに真っ赤になった俺と、それでも堂々とウインクを返した希は、これで無事に式を終えたのだった。 大役を果たし ほっとため息をついて、手を繋いだまま外へ出ようとした瞬間 「おめでとうございまーす!!」 拍手と次々と鳴らされるクラッカーの音に驚いて立ち止まった。 「これは?」 フリーズした俺達に、隼人さんが 「当館からのお祝いのフラワーシャワーです。 どうぞこのままお進み下さい。 本日は誠におめでとうございました!」

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