334 / 1000
第334話
着替えを済ませ片付けて、部屋を出ようとすると、遥さんに呼び止められた。
「申し訳ありません、斗真様…」
「はい、何でしょうか?」
「こちらを…私個人からのプレゼントです。
“花嫁様”限定でお渡しさせていただいてるんです。
よければ…お使い下さいね。
皆さまにお喜びいただいてます。
特に“旦那様”に。」
「あっ、ありがとうございます。
何が入ってるのかな…開けてもいいですか?」
「いえいえ。
お家に帰ってからのお楽しみ…ということで。」
と、遥さんが意味あり気にウインクした。
とにかくお礼を言って受け取った。
“旦那様が喜ぶ”…一体何だろう…
ベビーピンクの柔らかな色合いのビニールコーティングされた袋に、それより少し濃いピンクのリボンの付いた軽いプレゼント。
首を傾げながらもカバンに入れた。
一列に並んで待っていた隼人さん達にお礼を言う。
「本当に今日はお世話になり、ありがとうございました。
俺も斗真も本当に感謝しています。
どうかこれからも俺達のようなカップルを幸せにして下さい。」
俺は、遥さんに持ち帰るように勧められたブーケを手に
「本当にありがとうございました。」
としか言えず、必死で泣くのを我慢していた。
スタッフ総出で見送られ、無事に全てのことを済ませた安堵感からか、車中で二人きりになった途端に、泣けてきた。
「斗真…大丈夫か?」
希が、左手をそっと俺の右手に重ねてきた。
太陽の光を浴びて、キラリと薬指の指輪が煌めいた。
あぁ…俺達はあの美しい教会で、永遠の愛を誓ったんだ…
ともだちにシェアしよう!