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第336話
あの時の意味深な微笑みが蘇った。
『新婚初夜にコレを着けると希が喜ぶ』
そう仰りたかったんですね、遥さん…
確かに、確かに、コレを履くと希は絶対に喜ぶと思いますよ!?
“お喜びいただいてるんです”
ということは、他の皆さんもコレを着けた結果を遥さんに伝えてるってことだよな?
特に“旦那”連中が。
ぷしゅー
っと音が出そうなくらいに真っ赤になった。
うわっ、どうしよう。
今更ながらだけど、今日は初夜だ。
やっぱり、特別感がハンパない。
散々好き放題されて、身体の隅々まで開発されて、希の触ってないところはないというのに、今夜されることを想像すると、心臓が跳ね上がってくる。
希が喜んでくれるなら…
コレは夜、直前まで取っておこう。
万が一汚しでもしたら台無しだ。
そっと元通りに畳み直して袋に入れた。
とりあえず、いつものように念入りに身体を洗い、バスローブを羽織って出て行くと、キッチンからいい匂いがしていた。
「ごめん、昼は残り物な!
冷蔵庫、空にしたかったし。」
「うん、何でもいいよ。ありがとう。
俺、後やるから、希も入ってきなよ。」
「サンキュー。後は味噌汁だけだから。」
「わかったよ。」
希とバトンタッチして、味噌汁を作りながら洗い物をしていく。
俺達にとって、当たり前の自然なやり取りが、何だか擽ったい。
夫夫に…家族になってるんだ。
このまま、年を取っても変わらずに。
お互いに“何か”が訪れるまで。
ふと目をやると、テーブルの花瓶には白い花々が、咲き誇っていた。
この花達に込めた想いを希は受け取ってくれた。
つーんとする鼻をすすると、残りの作業に取り掛かった。
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