337 / 1000

第337話

「あー、やっと落ち着いたぁ…ご馳走様でした。」 「うん、美味しかった。ご馳走様でした。 希、ここ片付けたらコーヒーでも飲むか?」 「あぁ。さっき隼人さんが焼き菓子をくれたんだ。 マドレーヌとパウンドケーキが入ってるって言ってたよ。それいただこうぜ。」 「へぇ…焼き菓子?いいな!甘いものは別腹だよ。」 「厨房のスタッフさんが作ったんだって。よかったら味見して下さいって。」 「そうなんだ…あそこのスタッフさんは何でもできるんだよね… あの二人の人柄に惹かれて、自然と腕のいいスタッフが集まってくるんだろうな。」 「みんなにこやかで、人のお祝い事なのにうれしそうで… それぞれに事情があるだろうに。」 「優しい人には優しい人が集まるんだな、きっと。 寄ってくる中には邪な考えの人間もいるだろうけど。 そんな奴らですら、あの人達は跳ね除けて受け止めて、昇華してきたんだろうな… 俺も…あんな人達になりたい。」 「斗真…うん、そうだな。 この先、どんなことがあるかわからないけれど、俺はその全てをお前と乗り越えていきたい。 すっ転んで後退して、脇道に逸れるかもしれない。 でも、どんな俺も隠さず見せるし、見ていてほしい。」 「…うん、わかった。 俺が迷ったら…手を引いて先導してくれ。 転んだら手を差し伸べて起こしてくれ。 俺はどこまでも、いつまでも…希と一緒だから。」 「斗真…」 あ…キスされる… ぷにゅっと柔らかなものが触れ、舌先で俺の唇をなぞった後、離れていった。 「あ…」 物足りなさに思わず漏れた声に 「これ以上は歯止めが効かなくなるから。」 と、恥ずかしそうに希は笑った。

ともだちにシェアしよう!