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第339話
その夜は少しお洒落をして、高そうなフレンチレストランへ出掛けた。
希が既に予約をしてくれていて、すぐさま特等席へと案内された。
「おい、希…こんな高い所…俺、普通の所でよかったのに。」
「何言ってんだよ。今日は特別だよ!?
それにここ、お前が思ってる程高くないから。」
「…でも…」
「斗真、今日、何の日?」
「…俺達の結婚した日…」
「だろ?じゃあ、黙って旦那の言う通りにしろ。」
「…はい。」
美しい夜景が広がる窓際の個室。
煌めく街の灯りが俺達を祝福するキャンドルみたいだ。
「…綺麗…」
「だろ?お前に見せたくて…あちこち調べたんだ。」
「わざわざ?俺のために?…ありがとう、希。
何だか、思いっ切り嫁扱いされてる感がするんだけど。」
「だって、お前は俺の嫁だろ?大事な嫁のために何かと こだわって喜ばせてもいいんじゃないか?
何かご不満でも?奥様。」
「いいえ、滅相もございません、旦那様。
どうもありがとう。」
車で来たからアルコールは遠慮した。
運転手は希で「斗真は飲みなよ」と言ってくれたけど、俺だけなんて嫌だったから。
「帰って二人でゆっくり飲もうよ。その方が俺はうれしい。」
と提案すると、希はうれしそうに笑った。
次々と運ばれる料理はどれも美味くて、二人でこの味付けはどうだ とか、この食材はどうだ とか、うんちくを披露しながら舌鼓を打った。
デザートも平らげた頃、ウェイターが静かに運んできたのは、蝋燭が一本立った小ぶりなホールケーキ!
“Happy Wedding!”
とチョコレートで書かれたプレートを見てフリーズした!
希…お前、やりやがったな…
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