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第340話

ドヤ顔の希と顔面蒼白の俺。 そんな対照的な俺達を気にする風もなく、若いウェイターは 「お二人で蝋燭を吹き消して下さい。」 なんて平然として言う。 あぁ、もう、どうにでもなれっ! ある意味開き直った感満載の俺は、希と息を合わせ一気に吹き消した。 パチパチパチ おめでとうございますっ! 鮮やかにケーキをカットして皿に綺麗に盛り付けると、俺たちの前に置きながらこう言った。 「改めておめでとうございます。羨ましいですね… 私のところはツレが恥ずかしがって…」 「えっ!?ということは、あなたも!?」 「はい、付き合ってもう五年になるんですけど…」 「そうなんですか…俺達は今日やっと式を挙げたばかりで…なぁ、希。」 「うん。ケジメというか、俺がどうしてもしたかったから。 コイツにはワガママばかり言って困らせてるんだけど。 …あなた方も早く結婚式挙げれるといいですね。」 「ありがとうございます! お客様に愚痴って…雰囲気を悪くしてしまって申し訳ありません。 どうぞごゆっくり…」 「はぁっ…人生イロイロだなぁ…五年付き合っても恥ずかしくって式を挙げれないんだ… それぞれ事情があるからなぁ… 俺達みたいに職場や家族が認めてくれてるなんて、レアなのかもしれない。」 「“恥ずかしい”かぁ…それはそれで辛いものがあるよな… 俺は斗真が…受け入れてくれたから…そして周囲の人達も。 本当によかった…感謝しかないよ。」 「その分、幸せになろうな、希。」 「おっ斗真、男前だな。」 「ふんっ!ナヨナヨした方がいいか?」 「いや、素のままで十分!」 顔を見合わせて笑い、ケーキを平らげた。

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