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第341話

車中でも手を繋いだままで、それでもどちらも言葉を発せずにいた。 何か一言言えば、もう、そのまま求め合いそうで… せっかくの初夜に、車の中なんて嫌だからな。 もしそうなったら、一生言い続けてやる。 触れ合う焦れた熱い指先が、お互いの思いを伝え合っている。 1分でも1秒でも早く、二人の愛の巣へ戻りたかった。 エレベーターの上昇時間がやけに長い。 きっと というか、絶対いつもと同じなんだろうけれど。 キスをしたくて、うずうずするけど、唇が触れた瞬間にきっと押し倒す…いや、押し倒される。 それは…ちょっと避けたい…我慢だ、我慢。 俺は、ジリジリと熱を帯びる身体を必死で押さえ込んでいた。 焦って部屋の鍵が上手くはまらない。 ようやく開いたドアに滑り込むと、いきなり両頬を固定され唇を塞がれた。 「んっ…希っ……んふっ…」 口の端を零れ落ちる唾液を舌先で掬いながら、希がすぐに唇に吸い付いてくる。 少し開いた口の隙間から、捩じ込んでくる舌は熱く、逃げる俺の舌と絡み合い暫し戯れていた。 性急なキスにすっかり翻弄されて、やっと唇が離れる頃には、腰が抜けそうで壁に何とかもたれ掛かっていた。 「…斗真…今夜は寝かせないから、そのつもりでいて…」 「…望むところだ。お前も覚悟しろよ。 その前に…先にシャワー浴びさせてくれ。」 「ん…わかった…俺も…」 ちゅっ と派手にリップ音を鳴らして、希が離れた。 それでもやっぱり手は繋いだままで。 俺はカバンからそっと例のプレゼントを取り出すと、乙女のような胸のときめきを感じながらバスルームへと向かった。

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