343 / 1000
第343話
丁寧に身体を拭くと、鏡の前には欲情した雄の顔が映っている。
俺、こんな顔もするんだ。
ほんのりと朱に染まった頬、潤んだ瞳、半開きの唇からは甘い吐息が溢れそうだ。
それ以上鏡を見ないようにして、ふるっと首を振ると、歯磨きをしてマウスウォッシュで仕上げをした。
火照った身体の熱を少し冷ました後、手に取った真新しい下着を意を決して身に付ける。
腰のラインにぴったりとフィットしたその小さな布は、何とも心許ない感じがする。
これを見て、希は何て言うだろう。
喜んでくれるかな?
それとも引くだろうか?
もし引いたら…さっさと脱いで、なかったことにしてしまおう。
期待半分後悔半分…複雑な気持ちだ。
下着一枚でこんなにドキドキするものなのか?
あれこれ考えを巡らせながら、その上からバスローブを羽織ってドアを開けると…
…大型犬が尻尾を振って待っていた。
「斗真、遅いよ…でも俺のために綺麗にしてくれてたんだろ?
俺も…磨き上げてくるから…待ってて!」
即座に駄犬がバスルームへ飛び込んでいった。
はぁっ…
希は…どんな気持ちで待ってたんだろうか。
何だか初めて抱かれるみたいに、緊張している。
早く、早く蕩けるようなキスをして、肌を絡め合いたい。
俺は、普段なら絶対やらないことをしているためか、心臓がバクバクしている。
再会してから散々希に抱かれて、ソフトSMもコスプレも経験してしまった。
今更何をされても驚かないし、希が『してほしい』と言うのなら、文句の一つ二つ言いながらでも叶えてやるだろう。
何をされても許してしまうほどに、希を信頼しているし愛している…
ともだちにシェアしよう!