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第344話

バッターン 「斗真…お待たせっ!」 ほこほこの湯気を纏い、希が飛び出してきた。 その勢いのまま、ダイブするように俺をハグする。 うぐっ 「斗真…斗真…」 子供みたいだな。 「どこにも逃げたりしないだろ? ほら。俺を寝室まで運べ。」 「はい、仰せの通りに。俺の奥様…」 希は くすくす笑うと俺を軽々と抱き上げて、寝室へ歩き出した。 両手を希の首に回し、逞しい胸に寄り掛かかる。 跳ねる心臓の音は俺のものか、希のものか。 ゆっくりと横たえられ、スプリングが ぎしりと音を立てた。 真上から見つめられ身動きができない。 初めて抱かれた日のように、緊張している。 枯れた喉がゴクリと鳴った。 「斗真…愛してるよ…」 重なる唇は限りなく優しくて切なくて。 布越しに触れ合うところから、電流のように快感が生まれていく。 ちゅっちゅっ とキスをしながら、希が俺のバスローブの紐を解いた。 喉を舐められながら胸元を割られ、はだけた素肌に外気がひんやりと纏わりつく。 唇が鎖骨から胸の粒まで下りてきて、乳輪をひと舐めしたかと思ったらいきなり甘噛みされた。 「ひうっ」 早急な愛撫に背中が仰け反った。 反対側は左手の指でいいように弄ばれている。 ()くように、空いた右手が下半身に伸びた。 「…斗真?これ…」 あ…見ちゃったか…希、どんな顔してるんだろう… そっと目を開けると、目を大きく見開いて固まった希が見えた。 あーぁ…失敗か… 世の中のダンナの範疇に希は入らなかったのか… 遥さん、ウチはダメでした… うーっ…素知らぬ顔して脱いでしまおう… ちょっと凹んで、身体を捩って脱ごうとした… 次の瞬間、俺の股間に生暖かいものが触れていた。

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