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第355話
…どのくらい時間が経ったのか。
「斗真、辛いだろ?…一旦抜くぞ。」
優しく声を掛けられ目を開けると、額に汗を滲ませた愛する男が微笑んでいた。
薄っすらと汗の滲んだ肌が心地いい。
「…うん。」
ゆっくりと仰向けに寝かされてキスされて、「名残惜しいけれど」と言いながら、希の楔が体内から出ていく…
俺の中の襞は、楔を引き止めるように、いや、追い縋るように絡まるが、残念そうな顔をした希が少しずつ後退していく…
ぬちゅっ…ずるり…くちゅっ…
淫猥な音を立てて、散々俺を狂わせた元凶が取り出された。
ぶるっと身震いすると、こぽっと中から溢れ出るのがわかった。
大量に出された愛の証が、まだ俺の中に残っている…
俺が女なら、コイツの子供を孕めるのに…
希、ごめん…ごめんな…
俺が男で…ごめん…
心の中で何度も何度も希に詫びた。
知らぬ間に、つ…と一筋の涙が流れた。
「斗真?」
「…ううん、何でもない…」
希はその涙をそっと指で拭うと
「斗真だけでいい。お前だから好きになって愛したんだ。
これまでもこれからもお前だけしかいらない。
だから…もう、余計なことは考えるな。
いいな?」
ハッとして希の顔を見た。
何で?
何も口にしてないのに。
慈愛に満ちたその瞳に見つめられ、気が付くとぽろぽろと涙を零していた。
「もう…斗真。泣き虫。」
抱きしめられて涙が止まらなくなった。
あぁ、そうだ。
俺も希しかいらない。
二人で…ずっと二人で…それでいいよな?
とくとくと生きている証の音のする温かな胸に擦り付いて、安心した俺は、いつしか深い眠りに落ちていった…
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