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第357話
希は鼻息も荒く、俺の顔にずいっと近付いて興奮気味に言った。
「誰が『嫌だ』なんて言った!?
あんな色っぽい姿見せられて、平常心でいられる奴がいるかってーの。
なぁ…違うヤツ買うからさ…それ、履いて!?」
「ぬおっ!?違うヤツ!?」
「うん!違うヤツ♡」
語尾にハートマークを付けるな、ハートマークをっ!
目が…イってるぞ、お前…
何の想像してるんだ!?
嬉々として俺の尻を撫でるバカ夫。
ぺしっとその手をはたき落としたが、懲りずにまた手を出してくる。
挙句に…尻にキスすんなって!
痕 を付けるなって!バカッ!
“違うヤツ”って“違うヤツ”だろ!?
文句百言おうとするが、はあーっとため息をついて………諦めた。
その満面の笑顔が…コワイ…
コイツは…一度言い出したら聞かない。
それにこだわりが強くて…まさしく“俺様希様”だ…
希は携帯のサイトをサクサクと検索すると、俺の目の前に画面を差し出した。
「とーま♡どれにする!?」
拡大されたソレは…
俺はため息をついて目を逸らした。
恥ずかし過ぎて凝視できない…
「…希…」
「んー?」
「お前が履け。」
「えーーーーーっ!?何でぇ!?嫌だよぉ!」
「俺は嫌だ。お前が履け。」
「斗真が履かないと意味ないだろ?
な、な、これにする?それともこっち?」
「どっちもヤダ。」
「とぉまぁー…」
猫撫で声で言っても騙されないぞ。
甘えるように頭をコツンと寄せてきた希は
「とーまぁ…お願い…」
ちゅっちゅっとキスの雨を降らせ始めた。
「うるさい。ウザい。
俺は腰が痛いんだ。触るんじゃねぇ。」
「ふえっ…斗真に嫌われた…」
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