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第363話
相変わらず…うちのお袋は、人の意見も聞かずやることが手早すぎて…
呆れたようにお袋を見ると、『どーんなもんだい』と言わんばかりに俺を見て舌をペロリと出して、希をハグしている。
「…お袋、いい加減に希を返してくれよ。」
「あらやだぁ!
イケメンの息子が増えたらうれしくってぇ。」
嘘付け。
ただ単に希に抱きつきたかっただけだろうが。
膨れっ面をしたまま希をべりっと引き剥がすと、希が俺の頬を撫でて
「美人が台無しだぞ。
俺は斗真のものだから、そんな顔すんな。」
と、やるもんだから、やんややんやとみんなに囃し立てられて俺は真っ赤になった。
あー、もう!
ますます膨れっ面になる俺を希が宥めては、まて囃し立てられて…
「あー、見てられねーや。みんな、撤収!」
と言う親父の号令で、わらわらと蜘蛛の子を散らすように出て行き、俺達二人がポツンと残った。
「…斗真?」
ちゅっ
「斗真…」
ちゅっ ちゅっ
俺の機嫌をとるように、希が啄ばむようなキスを仕掛けてくる。
大きくため息をつくと
「何かもう…うちのお袋が…ごめん。
希の気持ちも考えずに勝手なことばかりして。
本当にごめん…」
じわりと目元が潤んで、視界がぼやけてきた。
「泣く必要ない。
そりゃビックリしたけど…兄貴もお袋と和解したらしいし…
ありがとう。
俺は『ありがとう』しか言えないよ…」
「希…」
そっとティッシュで目元を押さえられて、滲んで濡れていく柔らかな紙に、思う存分涙を吸い取らせると
「希、幸せになろうな!」
と大きなリップ音付きのキスを送った。
希は少し潤んだ目で見て大きく頷いて
「斗真…必ず…幸せになろう…」
と優しく俺を抱きしめてくれた。
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