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第365話

厳かな雅楽が鳴り響く中、俺達は神主さんと巫女さんに先導されて神殿へと入る。 教会と違って見慣れた光景は何だかホッとする。 小さい時から近所の神社で、お祭りや七五三なんかでよく見てたからかな… 俺の感覚では、教会が陰とすれば、神殿は陽という感じ…どちらも荘厳で厳粛で… その両方で式を挙げる俺は幸せもんだ… 家族を交えての挙式を最初は頑なに拒んでいたけれど、家族が結びつく場っていいものだと、ゴリ押ししてくれた希に感謝する。 …お袋のお陰で、希のお兄さんもお母さんと和解したようだし… 何と言っても、希がお母さんを心から許せた、というのは物凄いことだと思う。 そんなことを考えながら、ぼんやりと内部を眺めているうちに、両家の親族達も勢揃いしたらしかった。 粛々と祓詞(はらいことば)祝詞(のりと)があげられていく。 あの教会で読み上げられた聖書の一文も神々しくて素敵だったが、日本らしいこの言葉達も清々しくて身が引き締まる気がする。 いつもは騒がしくてどうにもならないチビ助達も、面白いくらいに神妙に大人しくしている。 いよいよ三々九度…少し震える手で持った盃に御神酒(おみき)が注がれ、静々と飲み干すこと三度…三度…三度… すっきりとした味わいの御神酒が胃の中に収まっていく。 ひと口ひと口飲み干す毎に、俺と希が結ばれる時間が近付いてくる… それが終わると、預けてあった指輪が用意された。 希が俺の手を捧げ、元あった位置に差し入れる。 俺も希の手を捧げ持ち、入れようとしたその瞬間、一瞬落としそうになってヒヤリとしたが、しっかりと持ち直して、希の薬指に収めた。

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