370 / 1000

第370話

見慣れたマンションの一室に、手を繋いだまま戻ってきた。 ネクタイを緩めながら、二人してソファーに雪崩れ込んだ。 「はぁーっ…終わっちゃったな…すっげえいい式だったよな、希。」 「…うん。みんな喜んでくれてたし…よかったよな。」 「…お義母さん来てくれたし。 お義兄さん一家もわざわざアメリカから来てくれて… でも、俺のお袋が勝手なことしてごめんな。 あの人、“思い込んだら”で、ぐいぐい突っ走るからさ…」 「ははっ! でも、それがなかったら、兄貴もお袋と和解することはなかったから…物凄く感謝してた。 『やっと許せた』って… でもまさか一家で来るなんて思ってもみなかったよ。 それに。 俺、あの人と面と向かって話すことは一生ないと思ってた。 この前、斗真が俺のために会ってくれただろ? あの時に本音を聞けたから、もう、あれでいい って思ってたんだ。 何年振りなんだろ…直接話したの… 斗真のお母さんのお陰で対面して『来てくれてありがとう』って心から言えた。 ツーショットの写メも撮ったしな。 全くわだかまりがないか…と聞かれたら100%そうだとはまだ言えないけれど… あの人を許すことができてる自分に驚いてる。 以前の俺なら、絶対に許せなかった。 斗真、ありがとう。 俺の伴侶になってくれて…本当にありがとう…」 最後は涙声で俯いてしまった希に抱きつき、その首に腕を巻き付けて 「俺の方こそ…ずっと俺を思い続けてくれてありがとう。 出世コースを棒に振ってまで日本に俺を追いかけて来てくれてありがとう。 俺と…結婚してくれて本当にありがとう。」

ともだちにシェアしよう!