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第403話
「希…」
「ばか、泣くなよ。
ホントにお前は…もう。
どうせ『希に悪い』とか思ってたんだろ?
ばーか…引き摺り込んだのは…俺じゃないか。
俺が追いかけて無理矢理抱かなければ、お前は普通に女と結婚して子供を持って…普通に幸せに暮らしてたかもしれない。
それを奪ったのは俺だ。
責められるのは、俺だよ、斗真。
ごめんな。」
俺を抱きしめ、ささやくように希が語りかける。
「普通の幸せ?そんなものいらない。
お前を責める資格なんて俺にはないよ。
希…好きなんだ…愛してるんだ…誰にも譲らないし譲れない。
男でも女でも、他の奴になんて渡さない。
希がいないと俺は、もう、生きていけない。」
「斗真…」
苦しいくらいに抱きしめられ、身動きができない。
その苦しさも気持ち良さに変わる…
奪うように重ねられた唇からは何度も「愛してる」という言葉が紡がれる。
息つく間もないくらいの激しいキスに翻弄されていく。
突然、部屋が真っ暗になったと思ったら、
ザァーーーーーッ
という雨の音と稲光がした。
「ヤバい、窓開けっ放しだ!」
慌ててリビングに飛んで行った希を見送り、ほおっ とひと息ついた。
人差し指でそっと唇をなぞってみる。
そこは、どちらの物かわからない唾液で濡れていた。
ずくっと下半身に熱が溜まり始める。
マズい。
熱を散らそうとするが上手くいかない。
ゆっくりと起き上がる頃に、希が戻ってきた。
「ゲリラ豪雨だな…斗真、どうした?」
「トイレ。」
「連れて行ってやるよ。ほら。」
「いや、大丈夫。一人で行けるから。
ダメな時はよろしく。」
「…うん、わかったよ。
そうだ。雨止んだら買い物に行ってくる。
冷蔵庫、いい感じに空っぽだからな。」
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