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第410話

俺はスプーンを持ったまま希にこっそりとお願いした。 「希っ!これ、美味いっ!俺、一人でいけるっ! あっ、でもひと口あげるから、ケーキひと口ちょうだい!」 「とうまくん、ひとりじめはだめだよぉ! はんぶんこ、するんでしょ? しかたないなぁ…じゃあ、のぞみくんには、りんのぱふぇをあげるよ!」 …凛ちゃんに全部聞かれていた。 それを聞いて、みんなが…吹き出した… 恥ずかしい。 子供に指摘されるなんて。 いや、百歩譲ってこの子は大人の女性とみなす。 俺も、それは図々しいとは思ってたよ。 だって最初は半分こって言ってたんだから。 腹を抱えて、ひぃひぃ笑っていた希が 「…いや、凛ちゃん、ありがとう。 俺はいいんだ。コーヒーがあれば。 パフェも斗真に全部食べさせたいからいいんだよ。 ケーキもひと口だけ食べたら、後は斗真に譲るつもりだったからね。」 「…ふうん、そうなの。 とうまくん、あいされてるのね。 よかったね!」 ずっこけた。 ついでに俺の小さなプライドもどこかへ吹っ飛んで行った。 でも… そうなんだ、そうなんだよ。愛されてるんだ。 目一杯。 「凛、余計なお世話だよ。 ほら、アイス溶けちゃうぞ。」 横から智さんが助け舟を出してくれた。 「えへっ。ごめんなさい。 あっ、たいへん! とうまくんのもとけちゃうよ!はやくたべよう!」 ホントだ。 溶けかけたアイスを口に運び、希を見た。 口元に笑みを浮かべて俺を見ている。 ぼっ と赤くなって、それを誤魔化すようにアイスとケーキを掬うと、希の前に差し出した。 ぱくっ 「…美味い。」 はっ! これって…『あーん』じゃないかっ! それも人前で… うわぁーーーっ!

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