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第412話
「いやぁ、びっくりしたよな。
あんな所で凛ちゃんに会って、相沢さん達とも仲良くなれるなんて。」
「うん。そうだ…
あーーつ!思い出したぁっ!」
「うわっ、希、何っ!?」
「思い出したよ!どっかで見たことのある顔だと思ってたんだ!
あの人、知る人ぞ知る超が付く腕の立つ料理人だ…
数年先まで予約で一杯で、それも高級官僚や社長クラスのセレブと呼ばれる人達ばかりでさ。
一般庶民は足を踏み入れることのない、程遠いお店なんだよ。
そんな人と知り合いになれたなんて…ましてやお家に誘われたよな…
うわぁ…すっげぇーっ!」
「そうだったんだ…だから『小さな店のオーナー』って言ってたんだ…
小さくないじゃん!」
「確かに、一日一組限定だからな。店構えは小さいに違いないが…
いやぁ、今度お家に行く時が楽しみだなぁ。」
興奮を隠せない希と俺。
橘オーナーのご厚意で思わぬ出会いとなった。
こうやって、見知らぬ人との縁 がむすばれていくんだな…
その時ふっと、矢田の顔が浮かんだ。
あんなことがなければ、同期のいいライバルとしての付き合いが続いていたんだろうに。
もう、二度と会うことはないだろう。
俺たちがそう望んだんだ。
切れた縁と新たに結ばれる縁。
俺達は、幾重にも絡まる見えない糸の繋がりの中で生きていく。
希ともそうだ。
『赤い糸』と言うけれど、最初から絶対に希と俺とで強力に繋がっていたんだ。
だから一旦離れて縺 れて…絡まり、切れそうになっても、こうやって一緒にいることができるんだ…
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