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第413話
「斗真、どうした?
甘い物食べ過ぎて気分でも悪くなったか?」
黙って俯いた俺を気遣って、希が声を掛けてきた。
「…ううん。人との出会いって不思議だなって思ってた。
見えないところで切れたり繋がったり…
オーナー夫夫から凛ちゃんに、凛ちゃんから相沢夫夫に…
希と俺との縁 も…切れたのをお前が繋げてくれて…縺れて切れそうになってまた繋がって…絶対に切れないものなんだ…って。
赤い糸って本当にあるんだって思ったら、何だか…胸が一杯になっちゃって…」
右手にそっと手が添えられ、ぐっと握られた。
その後は、そのままの状態で…無言で運転する希。
温もりが、手の甲から全身に広がっていく。
俺もその温もりを愛おしむように、きゅ と握り返した。
車内に流れているのは、サックスがメインのジャズバラード。
音は何となく若い感じがするけれど、ロングトーンの余韻に、何とも言えない色っぽさと切なさが残る。
「この曲、いいな。」
「そうだろ?最近海外デビューして、人気の出てきたバンドなんだ。四人ともイケメンだしな。
この種の音楽にしては珍しく大ヒットしてるんだ。CMでも流れてるよ。
まだ若いんだけど、いい音出すんだ。
きっと切なくて激しい恋をしてるんだろうな。」
『イケメン』になぜかイラっとしたが
「音にこんなに感情が乗るんだな…」
と返すと、希の音楽うんちくが始まった。
それを聞くともなく適当にあしらいながら、窓を流れる景色をボンヤリと見ていた。
サックスの甘い調べが胸を締め付ける。
“切なく激しい恋”か…
俺はいつでもそうだよ。
俺はいつまで経っても、希に恋している。
お前を思うと、胸が痛いほどに。
…お前はどうなんだ、希?
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