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第421話

思わぬ言葉に返事に詰まってしまった。 俺、そんなに弱って見えてるんだ。 ぽろっ 代わりに出たのは…涙。 慌てて涙を拭い、声を絞り出すようにしてやっとお礼を言った。 「あっ、すみません…ありがとうございます。 遠慮なくいただきます…」 おしぼりをもう一つ渡されて 「ごゆっくり。」 その優しさに、おしぼりを目に当てて声を出さずに泣いてしまった。 くっ…うっ…くうっ… 漏れる嗚咽を必死で我慢ながらも、一頻り泣いて…スッキリした。 そっとおしぼりを外し…正面を向いて、ボヤける視界の向こうにいたのは… 希?何でここに? 一番会いたかった愛おしい相手が目の前にいた? 幻覚? 俺、かなりヤバい? アタフタする俺を見つめると、いきなり希が頭を下げた。 「ごめん!斗真、ごめん!俺が悪かった!」 「…何でここにいるの?どうして?」 「…お前の携帯からIDやら必要なデータ調べて持ってるから…GPS機能使って追っかけて来たから…」 ハッとして携帯を見た。 えっ?いつの間に? 「“あの時”みたいに何かあっても対処できるように…お前にナイショで…」 はぁっ…そうなんですか…ストーカー? あのー…俺は不審者対策されてる小学生ですか? で?君は保護者? 無言でジト目で睨むと、ますます小さくなった。 「お待たせしました。アイスコーヒーです。」 希の前に一つ、俺のを下げて新しい物と取り替えようとするので 「あの…どうして?」 と尋ねると 「すっかり氷が溶けてしまっているので。 美味しい状態でお飲みいただきたいと、店主からです。 お気兼ねなくどうぞ。」 「何だか…いろいろと申し訳ありません。 マスターにもお礼を…甘えてすみません。 ありがとうございます。」 真っ赤な目で頭を下げた。

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