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第422話

何か話した気な希をチラチラ見ながら、黙々とシフォンケーキを食べ(これがまた美味しかった!)今度は氷が溶けないうちにアイスコーヒーを飲み干した。(これも美味い!) ふうっと一息付いて 「希、帰ろうか。」 「えっ、あっ、うん。」 慌てて最後の一滴までズズッと飲み干した希は、伝票をスッと取ると、レジへすっ飛んで行った。 「ご馳走様でした。 淹れ直していただいて申し訳ありませんでした。 アイスコーヒーもケーキもとっても美味しかったです。」 「それは良かった。またぜひお越し下さいね。 お待ちしてます。」 “うふふっ。仲が良いほど喧嘩もするのよ。 今度は最初からお二人でね!” とママさんに小声でささやかれ、思わず赤面してしまった。 しどろもどろになりながら “はっ、はい!” なんて返事をして店を後にした。 俺の少し後ろから、とぼとぼと希がついてくる。 横に来ればいいのに。 何遠慮してるんだよ。 オレ様なくせに、こんな時に何引いてるんだよ。 携帯のことか? お前の粘着質な性格知ってるから、そんなこと今更だよ。 女みたいに扱ったこと? それはもう、俺の中で解決したからもういい。 ばか。 ばか希。 さっさと俺を構え。 隣に来て俺の手を繋げよ。 放っておくと、マジで家出するぞ。 ムカムカしながら ずんずん歩いて、マンションのエントランスに着いた。 暗証番号を押して入ると、エレベーターに乗り込む。 遅れまいと、希も飛び込んで来た。 気不味い空間。 きっと希はどうしていいのか戸惑っている。 微妙な距離にイライラする。

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