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第424話
「斗真、先に風呂に入らせてもらったよ。
…ごめんな、用意全部させて。」
謝るとこ、そこじゃねーだろっ!
思わずツッコミたくなった。
ブスッと黙ったまま起き上がり、着替えを持ってバスルームへ向かう。
口をへの字に曲げ、頭からお湯を被る。
ばーか。
ばーか。
希のばーか。
情けなくて切なくて、また泣きたくなったけど、我慢する。
男がこんなことくらいで泣いてたまるか。
さっき散々泣いたんだ。
それも初めて行ったお店で。
『元気になるよ』と手作りのクッキーをサービスされ、氷が溶けて薄まったアイスコーヒーも取り替えてもらった。
恥ずかしくて二度と行けないかも。
でも…あのケーキも美味しかったな…
ケーキと言えば…翔さんがお土産にくれたケーキ!
晩ご飯の後に絶対食べよう。
風呂から上がると、ちょっと気分も戻ってきた。
ソファーには、膝を抱えた希がいた。
しおらしい素ぶりをしたって知らないからな!
「…ご飯、食べるぞ。」
声を掛けたら、餌をもらおうとするワンコみたいに飛んで来た。
それからまた黙ってご飯をよそい、ロールキャベツを取り分けた。
またまた黙ったまま、食器の音だけが響く。
うん、美味い。
適当にしたのに美味い。
お代わりをしたかったが、ケーキのために我慢した。
「片付けは俺がするから。」
当然だろ!
俺が料理したんだもんな。
「よろしく。」
ひと言だけ言って、ソファーにもたれ掛かった。
見たくもないテレビ番組を流し、ボンヤリと眺めるだけ。
片付けを済ませた希が、ケーキと紅茶を運んできた。
「俺はいらないから、斗真が二つとも食べていいよ。」
うひょーっ!
箱を開けると、チーズケーキとアップルパイが!
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