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第425話

ごくりと喉が鳴った。 希は箱から取り出して、二つとも一つの皿に乗せて、俺の前に置いてくれた。 ちらりと見ると、希は微笑みながら頷いた。 うーん…今日はもう二個食べてるんだけど… 「…俺、一つでいいから…」 「そんなこと言わないで食べな。その分、ご飯減らしただろ?」 でも…流石に一日に四個は食べ過ぎだろう… よく考えたらパフェも食べてる。 うーん…明日に回すと美味しさも半減するし… …一日くらい いいか… パクリとアップルパイに食い付いた。 サクッとパイが崩れ、口の中に甘酸っぱいリンゴの食感とシナモンの香りが広がった。 …美味しい 美味しくて口元が緩む。 ちらっと横を見ると、希がうれしそうに俺を見ていた。 「…何だよ…」 「いや、別に。美味そうに食べるな…って見てただけ。」 「食べる?」 「ううん。食べてるお前を見てる方がいい。」 「後で『食べたかった』って後悔しても知らないからな。」 「うん。」 ニコニコと俺を見続ける希の視線に耐えつつ、俺はペロリと二個とも完食した。 「あー、美味しかったぁ。」 いそいそと後片づけを済ませた希が、遠慮がちに俺の隣へ座った。 「斗真…」 「何。」 「今日は…ごめん。俺、あれからいろいろ考えたんだけど。」 「うん。」 「お前は嫌だと言うけれどさ、俺にとってはお前が最高の基準なの。 だから、俺にとっては、お前が一番かわいくて綺麗でカッコいいんだ。 ついつい口に出して、今日みたいなことになるんだけど…」 「俺は『かわいい』とか『綺麗』って言われる度に、女みたいに扱われてるみたいで嫌だったんだ。 お前とは対等でいたい。俺だって男だから。」 「そんなつもりは絶対ないって! だって、斗真は本当にかわいくて綺麗なんだから仕方がないだろう?」

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