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第426話

希は、俺の手を取り胸元で握りしめながら、目をキラキラさせている。 ダメだ こりゃ。 どれだけ話しても平行線だ。 はあーっとため息をついて天井を見上げた。 希にとっては、俺を女として扱ってはいないが『かわいくて綺麗』という認識。 恋は盲目。節穴。 ペットかよ。俺はお前の愛玩動物か。 その言葉そのものが嫌だと言っても、この男には通じないんだろうな… 「斗真は俺の女神なんだ!」 …出た、出たよ…今度は“女神”。 なぜに女神… NG!それ、完全にオンナじゃん! せめて『女神の女の漢字』くらい取れよ! 『ネ申』だけならすぐに受け入れてやるのに。 希は俺の手を握ったまま、ほんのりと頬を染め、俺をじっと見つめている。 ダメだ…目がイっちゃってる。何の妄想してるんだろう。 聞くのが怖いから、口にしない。 どうせロクでもないことだろう。 俺を死ぬほど好きなのはわかってるから… コイツには俺のこの思いは届かない。 根本的にズレている。 怒り続けて家出を繰り返すか、諦めて好きなように言わせるか… チーン!タイムアップ! 怒ると血圧が上がる。ストレスが溜まる。 好きなように言わせよう… 俺の精神衛生上、それが一番の解決法だ。 「…なるべくその類の言葉を使わないようにしてくれないか? でないと、また家出するぞ。」 精一杯のクレームを皮肉たっぷりに言ってやった。 「はいっ!わかりましたっ!」 俺の許しを得たと思ったのか、希はうれしそうに俺に飛びついてきた。 「斗真…斗真ぁ…ごめんな…」 …もう、いいや。諦めた。 待ち焦がれていた希の匂い…希の温もり… 俺は物も言わずに抱きしめた。

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