427 / 1000

第427話

駄犬だ。 希は『駄犬』に認定してやる。 心の中で、希に『駄犬認定!おめでとう!』のタスキをかけてやった。 ぷぷっ 似合うぞ、希。 「斗真ぁ…何だかうれしそうだね。 俺もお前にくっ付いていられるから、うれしいよぉ!」 俺をぎゅうぎゅうに背後から抱きしめ、頸やら喉元にキスを繰り返しながら希が言う。 はいはい。 おい、駄犬、勘違いするなよ。 でも、おバカな子ほど、かわいいって言うからな。 「希…お前は本当に“かわいい”よ。」 「斗真…」 キスの数が増えてきた。 ちょっと待て…このままいけば、エッチに雪崩れ込むパターンだ。 さわさわとお触りも始まった。 ヤバい。 俺はシャワーを浴びたいんだ。 歩き回って汗かいてるし、こんな身体で抱かれたくない! 「希…ちょっと待て。」 「んっ?」 「俺は、風呂に入りたい。離れろ。」 「じゃあ、一緒に入るっ!」 「…後でな。今は嫌だ。一人で入りたい。」 途端に、ぷくっと膨れる希。 幼稚園児か。 段々、幼児退行しているぞ。 イケメン希はどこへ行った? 御機嫌斜めのイケメンを置き去りにして、さっさとバスルームへ逃げ込んだ。 頭からお湯を被ると、今日一日の出来事がくるくると浮かんでは消えていく。 相沢夫夫と凛ちゃんに会って、今度お家に招いてもらえる…ことになった。 智さんとは絶対に気が合うと思う。 あぁ、パフェもケーキも美味かったなぁ。 ケーキと言えば、さっき見つけた喫茶店! あそこの紅茶のシフォンケーキも美味かった… そして何よりオーナー夫婦の粋な計らい。 歳を重ねるとあんなに穏やかになっていくものなのか? …あんな風に、希と俺もなれるのだろうか…

ともだちにシェアしよう!