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第428話

『準備』を済ませ、一日の疲れを癒すように、ゆっくりと湯船に浸かると、自然と“ほぉっ”と声が出る。 あぁ…風呂サイコー! 日本人でよかったぁ…と思う瞬間。 ん? 今、ドアの向こうに何か黒いモノが横切った? まさかと思うが… まさか… 「…とぉーまぁ…入っていい?」 やっぱり希だ… 「ダメって言ってんだろ?そこで待ってろ! 待てっ!」 「えーーっ…一緒に入ろうよぉ…」 「…希…今 入ってきたら、今夜お預けだからな。 それでもいいなら“入って来いやぁ”」 「…それもやだぁーっ!我慢するっ!」 影が薄くなり、バタバタと走り去る音がする。どうやら諦めたようだ。 本当に…あの駄犬はっ! バカ犬! いや、犬以下だ! ため息をつきまくり、ドアを開けた。 バスタオルで わしわしと拭き上げ、ドライヤーで髪を乾かす。 …と、遠慮がちなノックの音がした。 「どうぞ」 少し隙間が空いて、希がひょっこりと顔を出した。 「入ってもいい?」 「あぁ、もう出るところだから。交代するよ。」 「…うん。」 「先に出るから。」 頷いて希が滑るようにして入ってくる。 「斗真…」 ぽすっ と俺の肩に頭を擦り付けてくる希。 「何だよ、どうした?」 「斗真が足りない…」 「…後で補給してやるから。ゆっくり入ってこい。」 「…ん…わかった…」 すりすりと擦り付けてきた頭が名残惜しそうに離れた。 至近距離で見つめた瞳は、既に情欲に潤んでいる。 ヤバい。 明日起きれないパターン…スイッチの入った目。 その目を見た瞬間、潰されるのを覚悟した。

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