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第437話
起き上がるのもトイレに行くのも、希の手を借りなくてはならない。
「…一人で大丈夫か?」
心配そうな希の声に
「お前がいるから甘えてるだけだ。
一人になったら何とかしようと身体が頑張るから大丈夫だ。
…ごめん…偉そうなこと言ったけど、やっぱ無理だわ…一日だけ休ませてくれ。
いや…
遠藤チーフ、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんが、有休申請よろしくお願いします。」
ふっ と笑った希は
「わかった。ゆっくり休んでくれ。」
と上司の顔をして答えた。
朝食も食べさせてくれ、昼の弁当も用意してくれ、何度も何度も『大丈夫か、大丈夫か』と念押しされ、心配そうな顔つきで振り返りながら、希が出勤した。
はあっ…
ふと思い出して、例の腰痛体操を始めた。
痛たたたたたっ…
ふうっ…ゆっくり、ゆっくりと…ストレッチして…
あいたたたたたっ
はぁっ…休む理由が理由なだけに、何とも小っ恥ずかしい。
仕事は希に丸投げして任せたから安心だ。
雰囲気に流されたとはいえ、自己責任だ。
希のせいではない。
斯くなる上は、今日一日で何とか動けるようにしなければ。
安静にし過ぎも良くないらしい。
少しずつ動きながら出来る家事をすることにした。
そうだ。
気分転換にコーヒーでも飲もう。
あぁ…これにケーキがあれば最高なんだけど。
それにしても、この間のケーキ、どちらも美味しかったな。
希におねだりしたら、買ってきてくれるだろうか。
いやいや。今日は俺の分を合わせて二人分の仕事量だ。
そんなワガママは言えないや。
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