437 / 1000

第437話

起き上がるのもトイレに行くのも、希の手を借りなくてはならない。 「…一人で大丈夫か?」 心配そうな希の声に 「お前がいるから甘えてるだけだ。 一人になったら何とかしようと身体が頑張るから大丈夫だ。 …ごめん…偉そうなこと言ったけど、やっぱ無理だわ…一日だけ休ませてくれ。 いや… 遠藤チーフ、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんが、有休申請よろしくお願いします。」 ふっ と笑った希は 「わかった。ゆっくり休んでくれ。」 と上司の顔をして答えた。 朝食も食べさせてくれ、昼の弁当も用意してくれ、何度も何度も『大丈夫か、大丈夫か』と念押しされ、心配そうな顔つきで振り返りながら、希が出勤した。 はあっ… ふと思い出して、例の腰痛体操を始めた。 痛たたたたたっ… ふうっ…ゆっくり、ゆっくりと…ストレッチして… あいたたたたたっ はぁっ…休む理由が理由なだけに、何とも小っ恥ずかしい。 仕事は希に丸投げして任せたから安心だ。 雰囲気に流されたとはいえ、自己責任だ。 希のせいではない。 斯くなる上は、今日一日で何とか動けるようにしなければ。 安静にし過ぎも良くないらしい。 少しずつ動きながら出来る家事をすることにした。 そうだ。 気分転換にコーヒーでも飲もう。 あぁ…これにケーキがあれば最高なんだけど。 それにしても、この間のケーキ、どちらも美味しかったな。 希におねだりしたら、買ってきてくれるだろうか。 いやいや。今日は俺の分を合わせて二人分の仕事量だ。 そんなワガママは言えないや。

ともだちにシェアしよう!