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第438話
ゆっくりとキッチンへ移動しながら、ふとした瞬間に昨夜の激しい情交が蘇る。
かあっ と顔が赤くなり、身体も火照ってくる。
今まで数え切れないくらいに肌を重ねあったけれど、あんな奥まで愛されたのは初めてだった。
触れる肌のどこもかもが、そして肉壁を擦る楔は火傷しそうなくらいに熱くて、声が掠れるほどに啼かされ、身体を暴かれた。
それを嫌だとは思わず、寧ろ自分から身体を開いていたのだ。
身体中隅から隅まで愛撫され、先端に熱が溜まり、爆ぜるあの快楽を思い出して、ぶるっと身体が震えた。
突然
ブーッ ブーッ
とショートメールの着信を知らせる音が鳴った。
希が心配して寄越したのか。
いや、希ならラ◯ンを使うはず。
どうせ、ロクでもない迷惑メールだろう、と何気無しに画面を叩いた。
登録のない電話番号だけの宛名。
ますます怪しさが漂う。
『今からロンドンへ出発する。…』
という文面に思い当たる節があって、ハッとした。
まさか…矢田?何で今頃。
もう二度と俺達とは関わらないと、そういう約束ではなかったのか?
アイツの連絡先は全て削除していたのだ。
メールなら既読もつかない。
それなら…ともう一度画面をタップした。
『今からロンドンへ出発する。
傷付けてすまない。
迷惑を掛けて申し訳なかった。
どうか幸せに。矢田』
端的な謝罪文。
何度も読み返した。
ため息をついて、削除しようとして…止めた。
希に見せてからにしよう。
そんなもの、さっさと消してしまえ!と言うだろうが、 たとえメール一通でも隠し事は したくなかった。
あんなことがなければ、仲の良い同期として成績を張り合い、時々飲みに行く、そんな付き合いが続いていただろうに。
返信することもなく、画面を閉じた。
何とも言えない翳りがこびり付いたような気がした。
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