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第449話
今日はやけに大人しいな。
ちょっとヤり過ぎたって反省してるんだな。
だって二日もズル休みするくらいの腰痛って、どうなの?
人に聞かれたら理由なんて言えないよ。
『エッチし過ぎて腰が砕けてお休みです』
なーんて、どのツラ下げて言える?
『アイツ、エッチし過ぎて休んだんだってさ、ぷぷぷっ』
ってさ。揶揄われて一生言われるよ。
ただでさえ、今までもそんなナイショの理由で有休使いまくりなのにさ。
まぁ、溜まりに溜まった有休消化でいいんだけど。
しゅんと凹んだ希がかわいく見えて仕方がない。
俺も相当やられてるな。
はっ…
かわいい かわいい …かわいい…??
そうか!かわいいって…こういうことか!
希が俺のことを『かわいい、かわいい』と言うのは、こんな感情か…
なんとなくわかった気がする。
「希…」
名前を呼ぶと、希が顔を上げた。
あー、そんな顔しないでくれよ。
胸がきゅぅっと締め付けられる。
「腰治ったらさ、前にやった“スローセックス”だっけ?
アレ、やろうよ。
ガツガツヤらないから、きっと腰に優しいはずだよ。」
弾けるように希が飛び付いてきた。
「斗真…とぉーまぁー…」
「はいはい。」
すりすりと擦り寄る化け猫の頭を撫で、俺も大概バカだよな…と改めて自覚する。
もうしばらく、こうやってくっ付いていよう。
何も言わなくても、何もしなくても、ただ肌が触れ合って、鼓動が聞こえているだけで満足する。
性欲のなくなった老夫婦みたい?
今日はそれでもいいや。
希にくっ付いていられるなら。
手を繋いでぼんやりしていると、眠くなってきた。
遠方から雷の音が聞こえてきた。
「ゲリラ豪雨か…こっちも降るかもな。
窓閉めてくる。」
不意に消えた温もり。
心細くなり己が身を抱きしめて目を閉じた。
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