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第455話
それから俺は、腰が痛くならない程度に身体を動かして、家の中を片付けていった。
ふと思いついて、希が今ハマっている、あのCDをかけてみた。
耳に心地いい、甘いサックスの音色。
CMなんかでよく流れている知った曲だから、鼻歌なんかも飛び出して、ご機嫌で片付けがどんどんはかどっていく。
今度希の演奏を聴かせてもらおう。
恥ずかしがるかな。
希の革靴もピカピカに磨いてやった。
気付くだろうか?
アイツのことだから、また尻尾を振って喜ぶんだろうな。
あ…もう、こんな時間か。
部屋の中も何となく薄暗い。
外も夕日が差して空が赤く染まっていた。
夜は希がすると言ってたけど
それくらいはしてやろう。
俺の分まで仕事をこなしているスパダリのために。
なーんにしようかなー。
冷蔵庫を開けて食材を確認する。
合挽き肉かぁ…定番のハンバーグだな。
野菜、野菜…
うん、レタスにブロッコリー、人参もある。
そうだ。
風呂の準備もしておかなきゃ。
今日の俺は完璧な主夫。
世の中の奥様方、お疲れ様でございます。
ぷぷっ。
俺もお疲れ様だよ。
と、そこへラ◯ンの着信音。
誰だ?希?
ビンゴ!希だ。
『腰はどうだ?
今日もめっちゃ頑張った。
帰りは19時過ぎるよ。
ご飯は待ってて。買い物して帰るから。
愛してるよ、斗真♡』
すぐに返信する。
『大丈夫だよ。
お疲れ様。ありがとう。
ご飯は今から準備しているから何もしなくていいよ。
気を付けて。
愛してるよ、希♡』
速攻で、バックにハートマークを散らした猫のスタンプが送られてきた。
ふふっ。
俺も速攻で、投げキッスをする猫のスタンプを送りつけた。
送った途端に着信が。
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