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第463話

久し振りに戦闘モードに入った俺は、三件の新規契約を取って意気揚々と帰社した。 「ただ今戻りました。」 「お疲れ様。どうだった?」 「新規で三件です。」 「遠藤にしては、まあまあだな。 明日からも頑張ってくれ。」 「はい、チーフ。ありがとうございます。」 社内では、上司と部下。 『希』『斗真』なんて呼び捨てにはしない。 オンとオフはきっちり分ける。 それが俺達なりのケジメの付け方だ。 急いで書類を処理して希の元へ回す。 手渡す時に、さり気なく指先が触れるのは、ルール違反じゃないのか? 「…今日は一緒に帰れるか?」 こっそりと小さな声で問われた。 「はい…大丈夫です。」 「じゃあ、定時に帰ろう。」 「承知致しました。」 こっそりとするやり取り。 何だかアヤシイな。 秘密の(だって、みんな知ってるじゃん!!)オフィスラブ♡の匂いがプンプンする。 デスクに戻って大きく息を吐く。 戻ってきた高揚感と充足感。 そうだ…この感覚。幸せボケして忘れかけていた。 しっかりしろ、斗真。 あのデキる男と肩を並べて仕事をするには、もっともっと自分を高めていかなければ。 そうでないと、胸を張ってアイツの横に立つ資格がない。 家では夫夫、外では上下関係。 複雑な間柄だが、そんな男を選んだんだ、仕方がない。 …家に戻ったら、思いっきり甘えてやろう。 戦った分、甘えてもいいよな? あー、今晩のおかずは何にしよう。 携帯のアプリをタッチして、画面を動かす。 煮物…筑前煮食べたいな… 決まり!これにしよう! ざっと冷蔵庫の中身を思い出して、足りない物を書き出した。

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