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第464話

希が呼びに来た。 「斗真、帰ろうか。」 「うん!帰りにスーパーに寄ってほしい。 今日、筑前煮にするから、足りない物買って帰るよ。」 「わかった。さ、行こうぜ。」 二人並んで玄関を出ようとしたら、あの声に呼び止められた。 「Hi!遠藤’s!今日はもうお帰りかい?」 「「ボス!お疲れ様ですっ!」」 「相変わらず仲が良いな。羨ましいよ。 あまり無理をしないで、程々にな。」 と付け加えられた。 揶揄いやがって、このオヤジめ! お先に失礼しますっ! と言い捨てて、さっさとその場を後にした。 スーパーで食材を買って、希が風呂を済ませる間に手早く料理する。 「斗真!後は俺がやるから入っておいで! ゆっくりしてきていいから。」 「じゃあ、任せるよ。」 後は煮込むだけにして、バトンタッチで風呂に入る。 はあっ、流石に疲れたな… でも、これが俺達の生活スタイル。 今日は偶々一緒に帰れたけれど、毎日そうはいかない。 すれ違わないように、なるべく食事の時間を合わせる。 一緒に丸まってくっ付いて眠る。 それだけで…ただ、それだけで幸せを感じる。 今日の…岡本さんの言葉を思い出した。 そうだよな。最初は受け入れ難かっただろう。 でも、俺の知らないところで、希は確固たる地位を築いていた。 マイナスの感情をひっくり返して、みんなを味方につけていた。 俺も、お前に負けないように、他人に1ミリも文句を言わせないように、俺なりに努力していくよ。 辛くてどうしようもなくなったら、寄っかかるかもしれない。 でも、自分の足で、しっかりと立っていられるように頑張るからな。 バシャバシャと顔を洗って、決意も新たに風呂から出た。

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