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第473話

翔さんが智さんに目配せすると、智さんはさり気なく凛ちゃんに部屋に行くように促した。 お腹一杯になった凛ちゃんは 「おへやにいきます!おやすみなさい!」 と俺達みんなにキスをしてくれて(『お休みのちゅー』と言うらしい)、歯磨きをしに洗面所へ消えていった。 「先日もお話ししましたが…あの子は、俺の妹と智の弟の間にできた子なんです。 俺たち二人にとっては姪っ子なんですが、お互いの血の繋がりがあるので、何だか不思議な存在です。 家庭の事情でそれぞれ家を飛び出した妹と弟が出会って、あの子が生まれて。 数年振りに会う約束をしていた矢先の事故で、凛は一度に両親を失ってしまったんです。 その時。病院の霊安室で出会ったのが、智だったんです。 最悪でしょ?霊安室なんて。 不謹慎なんだけど、一目惚れだったんですよ。 絶対に俺のものにすると決めて、半ば無理矢理手に入れて。 …胃袋を掴んで結婚しました。」 自虐的に笑いながら、日本酒に切り替えた翔さんがお猪口に注いでくれる。 …美味い! 俺の表情に、翔さんは満足気に頷いて「これ、なかなかイけますよ?」と希にも勧めている。 「…それで凛ちゃんはお二人の養女に?」 「はい。凛を智の籍に入れた後、俺が智の籍に入ったので…」 「そうだったんですか…あまりにしっかりしてるお子さんで、一体この子のご両親はどんな教育をされたのかって、驚いてたんです。 こんなに小さいのに、とても辛い思いをしてたんですね… 俺達の結婚式でも大活躍してくれたんですよ。 本当に助かりました。」

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