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第476話
二人でリビングへ戻ると、テーブルはすっかり片付けられていて、新しいつまみと、ワインクーラーに冷えたワインが用意されていた。
「うわっ、すごっ…本当に甘えちゃっていいのかな…
翔、智…気を遣わせて申し訳ない…」
「何言ってんだよ。早く早く!
さっき飲んでた日本酒も、このワインも、度数の低い物だから、チャンポンにしても大丈夫だからね!
はい、希は俺の隣、斗真は智の隣に座って!」
翔は、それぞれのグラスにワインを注ぎ分けると
「では、仕切り直して…新しい出会いと絆に、カンパーイ!」
カンパーイ!!
「…これ、美味しい…」
「だろ?国内で、農薬を全く使わずに、クラッシックを聞かせて、一貫して手作業で作った物なんだ。
農家さんの愛情がたっぷりと詰まったワインなんだ。
市場には出回ってないからね、手に入ってラッキーだったよ。」
「名前は何て言うの?」
「平仮名で『せれなーで』って言うんだ。
最初に作った人がさ、片思いの相手を思いながら、丹精込めて育てて収穫してボトリングして、これとバラの花でプロポーズしたんだって。」
「で?どうなったの?」
「『熟成された愛をありがとう』って受け取ってくれて、無事にゴールインしたんだってさ。」
ヒューッ
「すごい曰く付きのワインだな…
注文が殺到するだろう。」
「でもね、最初からのこだわりを曲げることなく、密かに作られて販売されてるんだ。
俺でも、年に数本手に入るかどうか…って感じ。
今日、君達と分かち合うことができてうれしいよ。」
「光栄です!ありがとう!」
そんなカッコいい台詞をサラリと言っても、全然嫌味にならない。
心からのお礼を言って、またグラスに口を付けた。
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