482 / 1000

第482話

翔が、くっくっと笑いながら言った。 「…ホントに…あいつ、斗真のことホンットにラブなんだなぁ… 四六時中、お前のことしか考えてないぞ、アイツ。 バカみたいだよな…って、俺も人のこと言えないよ。 俺だって、智のことしか考えてないからな。」 何て答えていいのかわからなくて、黙っていた。 程なくして、智が保冷剤と小さなタオルを持って来てくれた。 「これでいいかな?」 「うん、ありがとう。迷惑かけてごめん。」 「こんなことくらい。大丈夫だよ。 溶けたら、新しいやつ勝手に冷凍室から出していいからね。 (斗真…仲直り、早くしたほうがいいよ。)」 と、こっそりささやかれ、背中をとんとんと叩かれた。 (ありがと)と唇だけ動かして、ひらひらと手を振って部屋に戻った。 希は…布団に包まっていた。 スウェットと下着はベッドの下に落ちたまま。 お前、人んちの布団で、何 真っ裸になってんだよ。 「希…」 ベッドにゆっくりと登りながら声を掛けた。 ぴくりと布団が動いた。 「頬っぺた冷やすから、こっち向いて。 お願い。」 もぞもぞと布団が動いて、目だけが俺の方を向いた。 「もう、怒ってないから…頬っぺた冷やさないと腫れるから。」 じわじわと、塊が俺の方に寄ってくる。 ひょっこりと顔を出した希の右頬が、少し赤くなっていた。 「ごめん、痛かったよな。」 その赤い部分にタオルで包んだ保冷剤をそっと押し当てた。 「…冷たい…」 「しばらく我慢しろ。」 押さえた俺の手に、希の手が被さってきた。 「斗真、ごめん。」 「うん。俺もごめん。 言い過ぎたし、手を出しちまった。」 小さくふるふると希が首を振った。

ともだちにシェアしよう!