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第483話

希が、ふうっとため息をついた。 「…酔っ払って、俺の気持ちにリンクしてくれる翔と盛り上がって…斗真の心も身体のことも考えないで、調子に乗った。 俺が悪かった。 ごめん。」 「…殴ったのも、暴言吐いたのも、俺が悪かった。 理由はどうあれ、手を出すなんてサイテーだ。 ごめん、希。」 希は少し涙目になっていた。 それから俺達はずっと沈黙の中にいた。 何を話していいのかわからない。 相変わらず、俺は希の頬を冷やし、希は俺の手の上に自分の手を重ねて… 保冷剤が頬の温度と同じになる頃、そっと外してみた。 今度は冷やし過ぎたのか、赤くなった頬は、そこだけとても冷たかった。 俺は黙って、下に散らばった希の服を着せてやり、希も素直にそれに従った。 冷たく赤い頬にキスをすると、布団に潜り込んで 「お休み」 とだけ告げる。 「…お休み」 と小さな声が答えた。 少し亀裂が入った空気。 不協和音が頭で鳴っている。 こんな時…抱きついて丸まって眠ればいいのか。 キスをして身体を重ねればいいのか。 そうすればこの嫌な空気はなくなるのか。 目を瞑り、背中を向けたまま考える。 しばらくして 「…斗真…寝ちゃった?」 おずおずと遠慮がちな声がした。 「…いや、起きてる。」 「…こっち向いて…」 言われた通りに、くるりと回転して希を見た。 「…抱きしめて寝てもいい?」 「…どうぞ。」 きゅうっと抱きしめられ、胸が痛くなる。 「…斗真…」 愛おしさを全て詰め込んだ声音に、身体が震えた。 何をされても何を言われても 結局、俺はコイツのことを愛してるし、嫌いにはなれない。 絶対に。 甘えるようにこの身を擦り付けて、そっと目を閉じた。 頭上から、安心したようなため息が漏れた。 そして無言のまま抱き合って、朝を迎えたのだった。

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