487 / 1000

第487話

目を瞑って、そのままじっとしていた。 トクトクトク と、規則正しい心臓の音が聞こえる。 気持ちが穏やかになっていく。 温かくて、凪いだ海のような心地良さ。 …俺がいるべき場所。 「…希…」 「ん?どうした?」 もたれかかった俺の髪の毛を優しく撫でながら、希がおでこにキスをする。 「…何でもない。」 「くっくっ…何だよ…『名前呼んだだけ』って、小学生か。」 俺はそれには答えず、体を起こして希から離れた。 不安気な希の視線が追いかけてくるが、無視してバスルームに向かった。 身体が疼く。 先端に熱が溜まってくる。 希が…ほしい。 達しないように気を付けながら、手早く繋がる場所も綺麗に洗っていく。 早く、早く… 急く思いを抑えながら、これから始まる交わりの時間を思うと、節操がない俺の息子は先端からじわりと滑った淫液を滲ませる。 慌てて切り替えて、冷たい水を浴びせれば、瞬時に大人しくなった。 刺激しすぎないようにそっと拭き上げて、バスローブを羽織ると、希の元へ戻った。 手持ち無沙汰にクッションを抱え、ぼんやりとテレビを見ていた希は俺を見ると、びっくりしたように起き上がり、心配そうに尋ねた。 「斗真?どうした?何かあった?」 俺は希をじっと見つめ…誘いの言葉を口にした。 「…俺を…抱けよ。」 見事なくらい真ん丸な目になった希は、数回瞬きをすると、俺を抱き寄せてキスをした。 「シャワー浴びてくるから、待ってて…」 脱兎の如く…きっと漫画の吹き出しなら『ビューーッ』とでも音が入るんだろうが…そんな勢いでドアもドタンバタンと音を立てて、希がバスルームへすっ飛んで行った。 その後ろ姿があまりにも滑稽でかわいくて…一人吹き出して大笑いしていた。

ともだちにシェアしよう!