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第493話
「だから…いつも言ってるじゃないか…
お前だけだって…愛してるって…
それなのに……希のばか…」
「うん。ごめん。」
「俺にはお前しかいないって…日頃言わないからって、そんな言い方…嫌だ。」
「うん。ごめん。」
小さな子供にするように、よしよし と頭を撫でられて、背中をとんとんと叩かれて…
たったそれだけのことなのに、荒んでささくれ立った心が見る間に凪いでいく。
張り付いた肌が心地いい。
とくとくと規則正しく打つ希の鼓動が『愛する男はここにいる』と主張している。
希は黙って俺を抱きしめてくれていた。
ハッと気付くと、部屋は青臭い匂いが充満し、下生えは付着した液でバリバリにくっ付き、シーツもシミになっていた。
「…希…気持ち悪い…シャワー浴びてくる。
シーツも替えたいし、部屋も掃除したい。
…この部屋、臭い。」
「『臭い』はあんまりだな…俺達が愛し合った結果なのに…
ん…でも、まあ、確かに…ファ◯リーズするか?その前に空気の入れ替えをしよう。
そうだ!斗真、風呂に入れてやる!」
「嫌だ。一人で入る。」
「…そんなぁ…ねぇ、一緒に入ろ?」
「今はヤダ。」
「じゃあ、夜は?」
「…考えとく。」
駄々っ子のような返事にも、希は気にする風もなく、「じゃあ、夜だな」なんてポジティブにウキウキとしている。
少し動くと、まだ中から出てきそうで、俺は内股でヨロヨロとバスルームへ向かった。
流れるお湯が心地いい。
さっき入ったばかりなのに。何回入れば気が済むのか。
休みだし、まぁ、いいか。
どうせ夜は…あー…言わなきゃよかった…
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