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第500話

ニンマリと笑った希は 「起きれる?ゆっくりね…」 希の手を借りながら、うーうー唸って超スローな動きで、足を投げ出したままベッドの上にやっとの思いで座った。 背中にクッションを当てられ、身体を何とか固定できた。 …案の定、希は具材を取り分けた大きめの汁椀と、俺の箸を持ってスタンバイしている。 ワクワク感満載だぞ…俺に食べさせるのが、そんなにうれしいのか? 「…希…俺は病人ではないから、自分で食べれる。箸、寄越せ。」 ぴきりと固まる希。 箸を持ったまま、上目遣いでじっと俺を見ている。 「…だって、斗真…」 あーもう、捨てられたワンコみたいな目で見るなよ。 あーあー、わかったよ、わかった。 「はあっ…わかった。食わせろ。」 一瞬、ぴこんと耳が立ち、尻尾がぶんぶん揺れているのが見えた。 幻覚もここまできたら大したもんだな。 希は目をキラキラと輝かせ、半分に切った熱々の団子をふーふーと冷ましてから 「はい!とーま、あーん♡」 と差し出してきた。 きたよ、きたよ… 仕方ねぇーな… 渋々口を開けると、かぽっ と口に入れられた。 ふわふわの団子を噛み締めると、じゅわりと生姜の効いた汁が染み出して、めっちゃ上手い! 「美味っ!希、これ、美味いっ!」 あーんと口を開けて催促すると、希がぷるぷる震えている。 「?」 「…斗真…萌える…かわいい…」 「どうでもいいから、早く食わせろっ!」 真っ赤になって怒鳴っても、希はうっとりと俺を見ている。 大丈夫か? どっか頭でも打ったのか? あー、もう、ダメだ。 コイツ、ヤバいレベルで俺のこと思ってる… ハートの目をした希に食べさせてもらっていたが 「希、お前も食べろよ。俺一人でなんて、やだよ。」 「だってー、斗真お腹空いてるじゃないか。」 「お前だってそうだろ?」

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