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第501話
「じゃあ…斗真も俺に『あーん』して♡」
ったく…デレやがって…調子に乗んなよ。
ばーか。こんなになってんの、誰のせいだと思ってんだよ。
無言で、差し出された箸とお椀を受け取り、団子を丸ごと口に突っ込んでやった。
「あふっ、はぎぐふん………んぐっ…
とーま、酷いっ!いきなり何だよっ!
…愛がない…ぐすっ…」
あー…泣いちまった。拗ねやがった。
ちょっと冷たくすると、最近すぐ泣くんだよな。生理中かってんの。女子か!?
情緒不安定過ぎるぞ。
一体どうしたんだ?
マズい。
こうなったら面倒くさいんだよ、コイツは。
あー…『希の取説』を誰か俺にくれ。
どこで負のスイッチが入るのかわかんねーよ。
すぐに謝って愛の言葉をささやけば、大概ご機嫌は直るんだけど。
今日はそれで大丈夫かな…
いくら片思いと募った想いが大きいとは言え、どれだけ『愛してる』と言えば、希は満たされるのだろうか。
俺が側にいても足りないくらいに、希の心は渇望し切っているのだろうか…
「…ごめんって。悪かったよ。」
ぐすっ…ぐすっ…ぐすっ…
「悪かったから、泣くなって。ごめん。」
ぐすっ…ぐすっ…
「…ちゃんと食べさせてやるから。な?」
ぐすっ…
「…愛がないわけじゃないぞ。
俺がお前にゾッコンなのはわかってるだろ?
愛してるよ、希。
全部手作りだろ?俺のために作ってくれたんだろ?生姜が効いてすっげぇ美味かったからさ。一緒に食べよ?
ほら、口開けて、あーんして?」
あーん もぐもぐもぐもぐ
「な?希が作ったやつは、サイコーに美味いぞ!?
ほら、俺にも『あーん』」
泣いたカラスは何処かに吹っ飛んで行ってしまったようだ。
嬉々として俺の口元とお椀を往復させる希。
その笑顔を見てホッとした。
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