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第502話

何を怖がっているんだろう。 入籍して式も挙げて、俺をぶっ潰すほど抱いているというのに。 ネックになっていた母親とのトラウマも克服したはず。 渡米してから帰国するまで会えなかった間の俺達の両片思いも、解消している…とは思うのだが… こんなに肌を重ね合い睦み合い、愛の言葉をささやいてもなお、希は満足しないのだろうか… 俺が思っている以上に、希は傷付いていて、疑ってはいないけれど、俺の愛を求めてやまないのかもしれない。 希の笑顔を見ながら、その奥に潜んでいる暗い闇を探ろうとしていた。 「斗真?どうした?」 「え?何でもないよ。お茶、頂戴。」 「はい!どうぞ。」 お茶を飲み干して、満腹になった腹を撫でて 「すっげぇ美味かった。希、ご馳走様でした。 明日これで雑炊してよ。」 「どう致しまして。わかったよ。 ………斗真、ごめん。」 「何が?潰すまで抱いたことか?」 「…それもあるけど。俺、重くて…ごめん。」 「…そんなに泣くほど、何が怖いんだ? 俺はどんな状態になっても、希をずっと愛し続ける自信だけはあるぞ? …俺のこと、信じられない?」 「…そうじゃない。そうじゃないんだけど。 今がすごく幸せで。幸せ過ぎて。 俺、こんなに毎日順調でいいのかな。 長年想い続けた斗真と結婚できて、愛し合えて。 仕事も上手くいってる。 ずっと続けばいいけど、もし、もし、斗真が居なくなったら…俺はどうしたらいい? それを考えたら怖いよ。」 俺は希の頭を撫でて 「心配し過ぎ。 そんな不安なら、俺達が幸せになった分、他の誰かに分けてあげよう。 自分達ばかり受け取るんじゃなくてみんなに。 『何を』って聞かれても上手く答えられないけど…」

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