504 / 1000

第504話

希の目から涙が溢れている。 すんすんと、鼻を啜りながら、俺を真っ直ぐに見つめていた。 「希…」 手を伸ばして涙を拭いてやると、嗚咽が大きくなってきた。 「希…おいで…」 希はゆっくりとベッドに上がり、俺の側に来て 「とぉーまぁ…」 と甘えるように言うと、俺に負担を掛けない力加減でそっと擦り寄ってきた。 俺はギシギシと痛む腕を希に巻き付けてささやいた。 「希…ずっと一緒にいような。」 「…ん…斗真、大好き…」 このまま抱きしめて受け入れてやりたい。 希の熱い塊がほしい。 でも…これじゃあ無理だ。 愛し合うのはお預けだよ、希。 希の啜り泣く声が治まった頃、そっと腕を緩めて頭を撫でてやる。 「落ち着いたか?」 「…うん。ありがと。斗真…」 「何だ?」 「お前、男前だな。」 「何だよ、今更か。 今までなんだと思ってたんだ?」 「ヘタレ。」 「はあーっ!?ヘタレ!?…何だよ、それ…酷くない!?」 「ははっ、嘘だよ嘘! …お前のそんな前向きな考えにいつも救われる。 お日様みたいにあったかくて、迷った旅人を導く北極星みたいで。 俺はお前にどこまでも付いて行くよ。 また落ちそうになったら、手を差し伸べてくれるか?」 「当たり前だろ?希は俺の命なんだ。 どこででも何度でも、手も足も出してやるよ。 だから心配するな。 そして俺をずっと愛せ。」 「ふふっ。嫌がられてもずっと愛するよ。 俺は斗真の物だし、斗真は俺の物だ。 斗真、お前を愛し愛されて、俺は本当に幸せだよ。 なぁ…キスしていいか?」 「キスだけにしろよ。それ以上は絶対無理だから。」 「わかってる!わかってるから…キスさせて…」 身体の痛みもどこへやら、後で唇が腫れるほどに濃厚なキスをし続けた俺達なのであった。

ともだちにシェアしよう!