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第508話

(付き合ってた奴らいるんだろ?) 暗に含んだニュアンスで問い掛けると、勘のいい希はそれを察したのだろう、俺の手をそっと握ると 「よくつるんで遊んでた親友の…ユータとマイクには連絡しようと思ってる。 斗真のことを見せびらかしたいからな! アイツらには…斗真のことをずっと話してたし、結婚したことも伝えてあるから。 入籍したのを知らせた時は、電話の向こうで二人とも大号泣してた。 誰かと真剣に付き合ったことなんてなかった。 だから…お前が気に病むようなことは全くないよ。」 やっぱ、気付いてたのか。 過去の『誰か』に対する嫉妬。 手の甲に、ちゅっ とキスされた。 王子のキス。 魔女の呪いが解けていく。 俺も素直に気持ちを吐き出していく。 「…ごめん…今は俺だけってわかってるんだけど… 嫉妬…完全なる嫉妬だよ…ごめん…」 「うん。知ってる。 斗真を思いながら、ヤサグレて遊び散らかした若気の至りもあったから。 それは否定しない。 でも、当然だよな。俺だって、斗真の過去に嫉妬する時があるから。 今までも、これからも、俺には斗真だけだから。 …それは、信じて…」 黙って頷くと、宥めるようにキスされた。 舌を捩じ込んでくる濃厚なキス。 ダメだ。また唇が腫れるじゃないか! 押し退けようとしてもビクともしない。 「っ…くち…びるが、腫れるから…嫌だ!」 途切れ途切れの言葉に、希がやっと離れた。 大きく息を荒げる俺を抱きしめて 「斗真、愛してるよ。」 と希がささやいた。 ズルイ。 希はズルイ。 いろんな感情が湧き上がってきて、抱きしめ返す。

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