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第514話

希に泣かれると弱いんだよ… あの綺麗な顔が歪むのを見たくないんだ。 アイツにはいつも馬鹿みたいに笑っててほしいから… はあっ…『裸エプロン』なんて…ゴツい男がやって萌えるもんなのか? そもそも、白のフリルのついたやつなんて、家にはなかったはずなんだけど。 まさか…まさか、買ってきてる? 鼻歌まで飛び出すご機嫌な希は、リズミカルに材料を切っていた。 その様子をジト目で見ながら、嫌な予感を振り払うように、レタスを水にブッ込んだ。 「「ご馳走様でした!」」 「あー、美味かった。カボチャがいい感じに溶けて美味かったよ、希。」 「斗真のサラダも美味かったよ。 ドレッシング、作ってくれたんだろ?」 「うん。即席だけどな。まぁまぁだったよ。」 「…ところで、斗真。」 どきっ! きたきたきたきた! エプロン登場かっ!? すっと席を立った希が何かを持って俺の側に来た。 「はい、これ。」 差し出されたのは、青いリボンのついたラッピングの紙箱。 希を見上げると『開けて開けて!』と目が訴えている。 約束したからな…仕方がないよな… 半分諦め半分ヤケで、そのリボンを解き、包装紙を丁寧に開いて箱を開け、中のモノを取り出した。 おおっ…想像通りの定番フリル付き白エプロン! 「…お前、これどんな顔して買ったんだ?」 「どんな って…斗真にはどれが似合うかなぁーって、頭の中で着替えさせながら、一番萌えたのを選んだんだよ! あー…どの斗真もかわいかったなぁ…」 うっとりと、どこか妄想の国へ旅立ってる希。 …お前はやっぱり変態認定してやろう。

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